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覚悟

17才の頃。

帰宅部で目標がなく、帰ってもさしたる楽しみがなかった時期だ。

受験を控え、進路に悩んだ時期でもあった。

漠然と美大への憧れがあった。

高二の夏と冬、取手の美術学校の映像科の集中講座に参加した。

自分の才能試しにだ。当時は本気でそう考えていた。もしなければ普通の大学へ通おうと決めていた。

夏は写真のスライドショーによる音楽のPVを作った。

この時生まれて初めて自分の作品を人に見せる。他学科の予備校生に開いた講評会はなんとも言えない高揚感があった。予備校生たちは素直に感動してくれた人がいた。そして辛口な意見をくれた人もいた。これには驚いた。見ず知らずの自分に対して率直に意見を述べる人たちがいることを初めて認識した。これは学校じゃ経験しえないだろうことで、それがすごく嬉しかったのを覚えている。


そして冬は「道」と題した写真展を作ろうとした。道があったところには、なかった時代の記憶や何かがあるということを訴えようとした作品だ。

先生たちはできる限りのことを僕のために尽くしてくれた。
しかし僕は不甲斐ないことにそれを上手く完成させることが出来ず、結局一枚しか展示できなかった。

展覧会後、先生は僕の眼を見て真顔でこう言った。

「すこし覚悟が足りなかったんじゃねえのか?」

ショックだった。作品を不完全に出すことは周囲への裏切りでもある。

自分だけの作品ではないのだ。

佐内正史やホンマタカシ、ミシェル・ゴンドリーなど、いろんな写真家や映像作家を教えてくれた先生に何も返せなかった。

帰り道、巨大な貼りパネを片手に屍のような状態で常磐線に乗った。

「He looks so sad. haha.」

同じ車両に乗り合わせた外人にあざ笑われた。

家に帰り、飯も食わずすぐ自分の部屋へ向かった。ひたすら泣きじゃくった。

つぎに机の前の壁を殴った。固いと思っていた壁だ。自暴自棄に酔って、拳に傷がついて血まみれになることを期待していた。けど壁は思った以上に薄く、簡単に穴ぼこ一つ空けてしまった。拳には擦り傷しかない。


才能はもちろんのこと、本当に何もない自分に気づいた頃だった。


土曜担当 飯塚祐基


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